≪あらすじ≫
音大の大学院生・松岡雅路は指の故障もあり、ピアニストになる夢をあきらめるべきか留学するべきか進路に悩んでいた。
そんな折、憧れのピアニスト霧島浩輔のサロンコンサートに行くことに。
そこは旧華族所有の由緒ある洋館・蓮水館の音楽室。
霧島の演奏に聞き惚れていた雅路だったが、突然中庭の木に雷が落ち、意識を失った……。
そうして目覚めると、雅路は大正十二年の蓮水館――蓮水伯爵のお屋敷にタイムスリップしていた。
当主の蓮水浩輔はまだ学生だが、どことなく霧島に似た端整な面立ちの凜とした青年だった。
記憶障害で行くあてもないと偽った雅路を、浩輔は己の下僕として雇ってくれた。
やがてピアノの腕を買われ、浩輔の腹違いの弟にピアノを教えるようにもなった雅路は、
次第にここが自分の知っている大正時代とは少し違った世界であること、そして浩輔にも何か秘密があることに気づいて……。