検事になって五年。横浜地検に籍をおく渋谷拓巳は、ある証券会社の家宅捜査に関する一件で東京地検特捜部から二か月限定の応援要請を受けた。
その着任の日、渋谷は庁舎の前で偶然にも修習時代の同期、団藤翔一郎から声をかけられた。
誰よりも優秀な検事を目指していたのに、研修終了直前に忽然と姿を消してしまった団藤。
彼は今、政府与党の国会議員・橋詰の政策秘書になっていた――。
再会した団藤からの強引な食事の誘い。そして、認知はされていないが団藤が橋詰の子であるという事実。
さらには、渋谷の手がけている事件が大物政治家の収賄問題に発展しそうだということ。
団藤の甘い囁きに隠された真実とは一体何なのか……。
秘めていた団藤への欲望が暴かれ、弾け、溺れていく渋谷。
それがたとえ巧みな罠であったとしても……。