大正七年。
大戦の景気に乗って急成長した嬉野紡績に勤める久瀬は英語の能力を買われ、
社長である嬉野子爵の個人的な通訳の仕事を引き受けることになった。
訪れた子爵の瀟洒な館。
そこで久瀬は跡継ぎのひとり息子・圭一と出会った。
18歳はとうに過ぎているはずなのに、どこか幼く少年めいた不思議な魅力で久瀬の心を捉える圭一。
いつしか圭一に乞われるまま、久瀬は足繁く館を訪れるようになっていた。
それから二年。凋落は突然やってきた。
嬉野紡績が倒産。子爵は自害し館も人手に渡って…。
そんなある日のこと。
久瀬の長屋に、行方知れずとなっていた圭一が…。
躊躇うことなく久瀬は圭一を迎え入れ二人の同居生活が始まった。
だが圭一のもつ魔性の色香に、娼館・蔭華楼の「蛇」こと佐伯も気づいていて…。
妄執のミステリアス大正浪漫。