ここはどこなんだろう――克己は、気づくと見知らぬ商店街を何かから逃げるように必死に歩いていた。
自分は無事希望の大学に合格し、卒業を待つばかりの高校三年生のはず。
だが交番に保護された克己が知ったのは驚くべき事実――八ヶ月もの間、自分が行方不明になっていたということ。
失われた八ヶ月間の記憶。
肌に散った無数のキスマークと身体の奥に残る甘い疼き。
そして毎晩見る夢――ユキと名を呼びながら何かを探し求めて泣く自分。
やがて克己は、日雇いで土木関係の仕事をしている蘇我という男と一緒に暮らしていたことを突きとめる。
蘇我の甥・ユキとして暮らしていた自分…克己とは正反対の我が儘で甘えっ子で…でも街の人々に、そして蘇我に深く愛されて…。
思い出したい、ユキであった自分を、幸福な時を。
「身体に聞いてほしい」――克己は蘇我のもとを訪れ懇願するが…。
本編の他、後日談の「明日の寄り道」も収録。