大手カルチャースクールで水彩画教室の講師を務める高塢青海は、日本画の大家を祖父に、
世界的な版画家を父にもつ身でありながら、まだまだ売れない駆け出しの画家。
ある日、青海は勤め先の廊下で出会い頭に、白い杖を携えた美貌の男性――能楽鑑賞講座の講師・葛城冬馬とぶつかってしまう。
偶然にも冬馬は青海が長年憧れ続けた、祖父の屏風絵のモデルとなった人。
名門葛城流の御曹司だったが、三年前、病で視力を失って舞台を諦め、
今は自宅で謡の教室を開いているという冬馬の身の上を聞いた青海は早速、
謡を習うという名目で彼のもとへ通うようになった。
年上の冬馬への一目惚れに近い想い…迸る熱い気持ちを抑えることができず、ついに冬馬を抱いてしまった青海。
だが、青海を受け入れた冬馬の心はどこか分厚いバリヤーに覆われていて…。
そんな折、冬馬に舞台復帰の願いがあることを知った青海は…。
夢追う画家と舞を忘れた能楽師――胸打つ愛。